ASUS Zenfone 11 Ultraの日本版を貸し出していただきました。
大画面になったZenfone
これまでのZenfoneシリーズは軽量で小さめなサイズのものが多かったですが、今回日本で発売されるZenfone 11 Ultraは224g・6.78インチと急激に大型化しています。
ベースとなったのはゲーミングスマホROG Phone 8で、ヒートシンクやサイドUSB-Cポートなどのゲーミング要素を抜き取り、代わりにおサイフケータイが搭載されています。
コンパクトスマホを求めていた方には残念なものの、ゲーミングスマホレベルの大型機におサイフケータイがあれば良いのに、と思っていた方には朗報です。
このレビューは12GB+256GB版・ZWW_AI2401_34.1420.1420.407で行っています。
- 高い性能と省電力を両立するSnapdragon 8 Gen 3
- 実測1500nitの明るいディスプレイ
- 一部ゲームで144Hzリフレッシュレートに対応
- バイパス充電に対応
- 3.5mmイヤホンジャック搭載
- IP65/IP68防水防塵
- 重い
- 望遠でのテレマクロ撮影はしにくい
- 15W無線充電やUSB 2.0など、他社Ultraに見劣りするスペック
Zenfone 11 Ultra | |
---|---|
OS | Android 14 |
RAM | 12GB / 16GB LPDDR5X |
ストレージ | 256GB / 512GB UFS 4.0 |
SoC | Snapdragon 8 Gen 3 |
ディスプレイ | 6.78インチ FHD+ 2400 x 1080 アスペクト比 20:9 144Hz / 120Hzリフレッシュレート AMOLED |
サイズ | 163.8 x 76.8 × 8.9mm |
重さ | 224g (実測223.7g) |
SIM | nano SIM + nano SIM |
リアカメラ | 50MP (OIS / Sony IMX890) + 13MP (超広角 OMNIVISION OV13B) + 32MP (3x望遠 OMNIVISION OV32C) |
フロントカメラ | 32MP (OMNIVISION OV8856) |
バッテリー | 5,500mAh |
USB端子 | USB Type-C (USB 2.0) |
バンド | [5G (FR1)]
n1/n2/n3/n5/n7/n8/n12/n18/n20/n25/n26/n28 /n38/n40/n41/n48/n66/n77/n78/n79 [FDD-LTE] 1/2/3/4/5/7/8/12/17/18/19/20/25/26/28/32/66 [TD-LTE] 34/38/39/40/41/42/43/48 [W-CDMA] 1/2/4/5/6/8/19 |
目次
説明書、保護ケースや充電ケーブルが付属しています。
保護フィルムは貼り付けられていません。
ケースはしっかりしたハードタイプで、側面はほぼ守られていません。
ディスプレイ:屋外でも見やすい
Zenfone 11 UltraはFHD+ 2400 x 1080解像度のAMOLEDディスプレイを搭載しています。
表示部分以外のフチが若干丸みを帯びているフラットディスプレイで、端から端まで見やすいです。
配列はダイヤモンドピクセルです。
明るさ自動調整オンでの全白HDR動画再生時に輝度をLX-1336Bで計測すると、最大1152nitに達しました。
屋外では高輝度モードが発動し、1563nitになることを確認できました。日中の屋外でもかなり見やすいです。
明るさの度合いを示す単位で、高いほど明るいという意味です。
屋内では400~500nit程度、屋外では800~1000nit程度でないと見にくいとされています。
ちなみに、明るさの自動調整をオンにしないと最大値が制限される機種が多いです。
リフレッシュレートはごく一部のゲームでは144Hzに対応しており、大半は120Hzまでに制限されています。
タッチサンプリングレートをTouch Sample Rate Testerで計測すると、シングルタッチ・マルチタッチともにMovement Rateは360Hz程度でした。
WALT Latency Timerで計測したタッチ遅延は13.1ms、画面描画遅延は28.2msで合計41.3msでした。
画面をタッチしたときに反応してくれるまでの時間です。
この数値が小さいほど、素早く反応するということです。
ゲーミングスマホでは25msほど、通常のスマホでは30~40ms前半が一般的です。
Widevine L1で、AmazonプライムビデオなどでHD画質でのストリーミング再生ができます。
背面:指紋汚れが付きにくい
背面はさらっとしており、指紋汚れなどが付きにくいです。
光の反射によってラインが浮かびあがります。
重さは223.7gです。
ベースとなったゲーミングスマホROG Phone 8と同じぐらいの重さです。
他社と比較するとカメラ特化という大きな特徴があるXiaomi 14 Ultraでは重さ219.8gですし、おサイフケータイ搭載ということ以外特段Ultra感がないZenfone 11 Ultraならもう少し軽量化できたのでは、と思ってしまいます。
カメラ:彩度が高め
Zenfone 11 Ultraは
- 50MP (OIS / Sony IMX890)
- 13MP (超広角 OMNIVISION OV13B)
- 32MP (3x望遠 OMNIVISION OV32C)
というトリプルカメラ構成です。
他社のUltraシリーズでは1インチセンサーや200MPカメラが基本となる中、Zenfone 11 Ultraでは廉価ハイエンドスマホによく採用されるIMX890がメインに据えられています。
手持ち撮影した写真はこちらに保存しています。
明るい場所だと十分綺麗な写真を撮影できるものの、実際の色合いよりも彩度が高くなりすぎて違和感があります。
夜景モードでは肉眼だとほぼ真っ暗な場所でも比較的明るく撮影できます。
ディテールは不十分で、若干黄色っぽくなりやすいようです。
望遠カメラは38cmほど離れたものでないとフォーカスが合わないため、小物などに寄ったテレマクロ撮影をしたい場合にはあまり向いていません。
あくまでも遠くのものを撮るためのカメラという位置付けのようです。
スピーカー:低音が強め
Zenfone 11 Ultraはステレオスピーカー搭載です。
上部は通話用と兼用のタイプで、左右非対称です。
低音が比較的強くベースなど重低音が響くように感じる一方、高音がやや控えめです。
音量を上げると背面が振動してしまいます。
3.5mmイヤホンジャックもあるため、有線イヤホンを変換アダプターなしに使えます。
WALT Latency Timerでオーディオ出力遅延を計測すると34.1msでした。
CS35L45が搭載されています。
Bluetooth Codec Changerで対応コーデックを確認するとAAC / aptX / aptX HD / aptX Adaptive / LDACに対応していました。
ポート:UltraでもUSB 2.0継続
Zenfone 11 UltraはIP65 / IP68防水防塵で、多少の水濡れは問題ありません。
65W急速充電に対応していますが、残念ながらワイヤレス充電では15Wでしか充電できません。
10万円超えかつUltraという最上位モデルでありながらも、未だにUSB 2.0となっています。
バッテリー保護機能が豊富に搭載されており、バッテリーを充電することなく給電できる「バイパス充電」も使えます。
低速で充電したり指定した時間で充電が完了するようにしたりでき、手間なくバッテリー寿命を延ばせます。
電源ボタンや音量ボタンは右側面にあります。
左側面や上部にはマイク穴がある程度で、他は特にありません。
性能:ROG Phoneよりは性能低下しやすい
Zenfone 11 UltraはSnapdragon 8 Gen 3を搭載しています。
Geekbench 6ではパッケージ名偽装版 (=メーカーの不正ブーストの影響を受けない) でシングルコア1231・マルチコア5879、通常版でシングルコア1238・マルチコア5712でした。
大きな差がないため、パッケージ名判定での性能制御は行っていないようです。
マルチコアは普通なのですがシングルコアはSnapdragon 8 Gen 2の下位ぐらいのスコアで、普段使いのバッテリー消費削減のためにわざと性能を落としているのだと思います。
なお、ベンチマークアプリ起動時は勝手にパフォーマンスモードが有効化されるものの、手動でオフにすることはできるのでベンチマークの利用規約に沿うようオフにして計測しています。
AnTuTuをはじめとする有名ベンチマークアプリをパッケージ名で判別して、ベンチマーク中だけスコアをよく見せかけるため熱制御を緩めたり高クロックに固定したりとチート行為をするメーカーが続出しています。
通常のアプリ使用時とは異なる挙動であるため、「ベンチマークは良いのに他のアプリの動きは大して良くない」ということが起こります。
メーカー毎にブーストの挙動が違うので、ブーストされた結果で比較しても何の意味もありません。
そのためパッケージ名を変更して一般アプリに偽装し、ブーストされていない正しいスコアを出すことが重要です。
こちらの記事で詳しく解説しています。
背景ぼかしやテキスト処理などで使われる、CPUの処理性能がどれほどあるかを数値化するベンチマークです。
普段使いの軽い作業にはシングルコア、重たいゲームなどにはマルチコアの性能が重要です。
2024年現在はシングルコアで1200、マルチコアで3000以上なら大抵快適に使えるでしょう。
ベンチマーク結果はこちらの記事にまとめています。
パッケージ名を偽装した3DMarkでのWild Life Extreme Stress Testではスコア5018→2103で、温度上昇は30℃→39℃ (9℃上昇)でした。
ROG Phone 8にあったヒートシンクがなくなった影響か、ROG Phone 8だと安定度68.8%だったところZenfone 11 Ultraでは41.9%に下がっています。
温度としては39℃で同じなので、放熱を間に合わせるには性能低下を大きくさせないといけないということなのでしょう。
Wild Life ExtremeはVulkan APIを利用し、3840×2160解像度のグラフィックでGPU性能を数値化するベンチマークです。
スコアが高いほどゲームなどで滑らかな3D表示が可能で、Stability (安定度) が高いと高い性能を長時間維持できるという意味になります。
あくまでもVulkan API使用時の汎用的な簡易指標でしかないため、人気ゲームがほぼVulkan APIを使っていないことを考えるとスコアはあまり役に立たず、GPU使用時の発熱具合の確認が主となります。
Vulkanで性能が出るならOpenGLでも高い性能だろう、発熱しやすいなら実ゲームではFPS維持が難しいだろうといった推測しかできません。
ドキュメント操作など普段使いでのパフォーマンスを計測するPCMark Work 3.0 (パッケージ名偽装版) ではスコア14313でした。
ウェブの閲覧、画像・動画の編集などでの処理性能がどれほどあるかを数値化するベンチマークです。
高いほど高速な処理ができますがバッテリー消費とのバランスも重要なので、スコアが低めだからといって悪いとは限りません。
2024年現在は8000以上あれば十分です。
UFS 4.0ストレージ、LPDDR5Xメモリを搭載しています。
CPDT Benchmarkで計測した結果では、シーケンシャルリード・ライトはトップクラスの速度で、ランダムリード・ライトはそこそこでした。
USB 2.0なのがボトルネックになるため、動画など大きなファイルをコピーするときなどシーケンシャルリード・ライトの速さを活かせる場面は限られています。
シーケンシャルリード・ライトは大きなファイルのコピー時や動画エンコード・デコード時などに影響する読み書き速度です。
ランダムリード・ライトは細かなファイルの読み書き速度で、アプリ・ゲーム使用時はこちらの速度が重要です。
CPUの使用率が高い原神をパフォーマンスモード・最高画質・60FPS設定・フォンテーヌ (水中→陸上) でプレイしてScene 7で計測すると、平均54.3FPSで1FPSあたり118.23mWの消費電力でした。
バッテリー温度は最大44.4℃程度まで上昇しました。
1FPSあたりの消費電力が低いほうが電力効率が良いと言えます。
電力効率が良いとバッテリー消費が少なく、悪いと消費が激しくなってしまいます。
ゲームで電力効率が悪いスマホは他のアプリでもバッテリー消費が大きい傾向にあるため、バッテリーの減りが早いと感じることが多いです。
平均FPS (フレームレート) は、どれほど滑らかな表示を維持できているかを示し、高いほど良いです。
(細かく言うと平均FPSが高く、なおかつ「ジャンク」というちらつきが少ないほど体感の滑らかさが良くなります)
GPUの使用率が高い崩壊:スターレイルを最高画質・ピノコニー「黄金の刻」で黄泉の秘技を連打して15分プレイすると平均41.8FPSでした。
最後の方は19FPSなどかなり低くなっており、高負荷に耐えられていませんでした。
OS:カスタマイズが豊富
Zenfone 11 Ultraではクイック設定や音量パネルなどを純正AndroidスタイルにするかASUS独自のスタイルにするか選べるようになっています。
一般的なカスタムOSだと各メーカーのスタイルを強制されてしまいますし、純正Androidを選べばPixelシリーズなどからの移行時には違和感なく使いやすいと思います。
フォントも一応変更できます…が、残念ながら日本語フォントはデフォルトでは入っていません。
FlipFontなのでゴニョゴニョすれば追加できるものの、最初から選択肢をもっと増やしておいて欲しいですね。
AI関係の機能もいくつか搭載されており、壁紙を生成したり通話内容をリアルタイム翻訳したりできます。(個人的には通話中よりも録音中の翻訳が欲しかったですが)
音声の文字起こしも可能で、完璧ではないものの大体の内容は聞き取ってくれます。
ジェスチャー操作はかなり豊富で、ダブルタップで画面オンオフはもちろん、スワイプで起動、音楽コントロールやアプリ起動などもあります。
電源ボタンは「スマートキー」という扱いになっており、二回押しや長押しの動作は音声アシスタント起動のほか好きな設定・アプリを開くようにすることもできます。
まとめ
- 高い性能と省電力を両立するSnapdragon 8 Gen 3
- 実測1500nitの明るいディスプレイ
- 一部ゲームで144Hzリフレッシュレートに対応
- バイパス充電に対応
- 3.5mmイヤホンジャック搭載
- IP65/IP68防水防塵
- 重い
- 望遠でのテレマクロ撮影はしにくい
- 15W無線充電やUSB 2.0など、他社Ultraに見劣りするスペック
かつての軽量コンパクトだったZenfoneと違って他社のハイエンドスマホと同じように大きく重たくなってしまったことが残念であるものの、ディスプレイ性能やバイパス充電といったROG Phone譲りの良い部分も増えています。
10万円台後半まで出せる予算はないけれどハイエンドスマホが欲しい、ゴリゴリにカスタマイズされたOSは嫌だという方には良い選択肢だと思います。
2024/07/05より139,800円~で購入できます。